1. 脳血管障害
 脳の血管が切れたりつまったりして急に意識が無くなったり、手足の動きが悪くなったり、言葉を話せなくなったりする病気を総じて脳卒中と呼びます。脳卒中の治療はこの10年に間に大きな進歩を遂げました。画像診断ではCTスキャンに加えMRIで的確に病変をみつけることができるようになりました。治療も大きな進歩を遂げています。たとえば脳の血管がつまって3時間以内に血栓を溶かす治療を行うと後遺症なしに回復することが可能になりました。脳卒中の治療は単独の科だけでは不十分です。脳神経外科、神経内科、循環器科、リハビリテーション科、看護師、理学療法士、作業療法士、言語療法士、薬剤師、栄養士、医療ソーシャルワーカーなどによるチーム医療がたいへん効果的です。チーム医療、早期治療が脳卒中治療の鍵です。脳卒中は3つの疾患に分けられますがそれぞれについて解説します。


■脳梗塞■
 高齢化に伴い脳梗塞は確実に増え続けています。脳動脈がつまる病気で細い動脈がつまるラクナ梗塞、比較的太い動脈が動脈硬化のためにつまるアテローム血栓性脳梗塞、心臓や頚動脈にできた血栓が流れて脳の動脈につまる脳塞栓に分けられます。脳塞栓は発症3時間以内であれば血栓溶解療法で劇的に改善する可能性があり、すぐに病院に連れてくることが大切です。t−PAという強力な血栓溶解剤が平成17年10月に厚生労働省により認可され健康保険で使えるようになりました。発症3時間以後では効果が不十分なのと出血性梗塞などの副作用がでる可能性が高くなるので早期に使うことが必要です。手足が麻痺したり、しびれたり、言葉がスムーズに出てこないなどの症状がでたらすぐに救急車を呼んで国際医療福祉大学病院脳神経外科を受診してください。共通した最大の危険因子は高血圧です。症状は手足のしびれ・麻痺、意識障害、言語障害、めまい、ふらつきなどです。脳梗塞では頭痛はあまり起こりません。血圧管理、適度な運動、禁煙、バランスのとれた食事を心がければかなり予防できます。一旦脳梗塞ができると脳の部位により症状は異なりますが長期のリハビリが必要になり後遺症は避けられません。頚動脈狭窄症については血管内バルーンや手術による内膜血栓除去術を行います。脳の血流が不足する場合はバイパス術を行うことがあります。

症例:66歳 女性 
急に右片麻痺、失語で発症し、25分後後救急車で病院に運ばれた。MRアンギオで左中大脳動脈の枝が閉塞しており(左図)直ちにt-PAを投与したところ片麻痺は改善し翌日のMRアンギオで動脈が開通しているのが確認された(右図)。


■脳出血■
 大部分は高血圧が原因です。小さな動脈が破れ脳の中に出血し、意識障害や半身麻痺、失語などが出現します。多くは保存的治療を行い急性期からリハビリを行いますが後遺症が残ります。血腫が大きくなり生命の危険があるときは緊急手術を行います。頭蓋に小さな穴をあけ細い管を脳内血腫に挿入し内視鏡的に血腫を吸引すると後遺症を軽くすることができる場合があります。症状は頭痛、吐き気、嘔吐、片麻痺、失語などです。


■クモ膜下出血■
 脳の動脈の瘤が破裂することによって脳の表面に出血する病気です。症状は突然の激しい頭痛、嘔吐、意識障害などです。出血の程度で予後が決まりますが3−4割の方は命を落としてしまいます。治療は動脈瘤をみつけて再出血しないように手術で動脈瘤の頚部にクリップをかけるのが主流です。最近はカテーテルを用いて動脈の中から白金コイルで動脈瘤を詰めてしまう治療法も行われていますがクモ膜下出血に関しては現段階では手術のほうがよりよい治療法です。2週間前後で周囲の動脈が糸のように細くなる血管攣縮やくも膜癒着による水頭症など様々な障害を乗り越えると脳出血とは異なり後遺症なしに社会復帰が可能になることもあります。  

通常の血管造影 前交通動脈瘤
3D DSA画像
脳動脈瘤術前3DCT
クリッピング後3DCT
術中写真
クリッピング最中

血管内治療により脳動脈瘤を白金コイルでコイリングを行っている


■無症候性脳血管障害■
 脳ドックやたまたま撮った脳のCTやMRIで未破裂脳動脈瘤がみつかることがあります。大きさや形、部位によってことなりますが報告で動脈瘤が破裂してクモ膜下出血を起こす確立は0.5−2%です。ひとたび出血すると命を落とすことも多く未然に予防することが望まれます、年齢や部位、大きさ、形などを十分に検討のうえ適切な治療方針を決めることになります。

 未破裂脳動脈瘤の場合は血管内治療(カテーテルを動脈に挿入し白金コイルで動脈瘤を閉塞する)を優先しますが、手術のほうが安全で確実な場合もあります。また頚動脈のエコー検査やMR血管撮影で頚動脈の狭窄が見つかることがあり放置しておくと脳梗塞になる可能性が大です。この場合はカテーテルを用いてステントという傘のようなもので動脈を広げる治療法が普及してきました。
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