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脳神経外科

脳血管内治療の歴史

人類が人体解剖という方法を用いて、比較的正確に人体の構造を理解するようになったのはレオナルド・ダ・ビンチらが活躍した15-16世紀のルネッサンス以降です。その上、人間の身体の内部を生きたままの状態で観察できるようになるためには、さらに約300年という時間を経て、1895年のレントゲン博士によるX線の発見まで待たなければなりませんでした。このX線の発見以降、医学は飛躍的に発展していきますが、それでも現在の治療に結びついてくるような知見や技術は、人類の長い歴史の中でもわずかここ120年ほどの間に確立されてきた手段に過ぎません。脳の血管情報については、X線発見から約30年後の1927年にポルトガルのモニス博士によって初めての脳血管撮影が報告されましたが、当時は専用の道具もなく、またX線装置も基本的には骨を観察するためのものであり、さらに骨以外の組織をX線で観察するには造影剤が必要になりますが、今日のような安全性の高いものではなかったため検査自体がまさに決死の覚悟で行われるものでした。

脳血管内治療は、カテーテルという細い管を血管の中に通して病気の部位(頭や頚の血管)まで進めていき、いろいろな薬や道具を使って血管の中から病気を治療する方法です。治療を行うためには、長く柔軟でありながら治療する人が思ったように扱える器具が必要です。また、X線診断機器も微細な構造がはっきりと見える性能が要求されます。このような様々な条件をクリアすることができるようになるために、さらに50年ほどの歳月が費やされ、1974年になって初めて当時のソビエトでセルビネンコ先生によって脳動脈瘤に対してほぼ手作りの離脱式のバルーンを用いた治療が行われました。これが頭の中の病気に対する血管内治療の先駆けとなりました。その後は工業や科学技術の進歩に支えられて、頭の中にも安全に誘導することができる細くて柔軟なカテーテルや、治療に用いる機器としてコイルやバルーン、ステントなど多岐にわたる道具が開発され、さらに血管撮影装置も専用の装置が導入されて詳細な情報が得られるようになって現在に至っています。